部下の話を聞く意味が、変わるとき
「部下にすぐ答えを言わず、まず考えさせましょう」
「部下の話を最後まで聞きましょう」
管理職研修では、よくこんな話を聞きます。
もちろん、その通りです。上司が先に答えを言えば、部下は自分で考える機会を失います。だから、部下の成長のために、上司は答えを言うのを我慢する。
しかし、それだけを理由に部下の話を聞き続けるのは、難しいのではないでしょうか。忙しい時ほど、自分で答えを言った方が早いからです。
私も、そうでした。
私を変えたロボット事業での経験
電子デバイス事業にいた頃の私は、自分の中に答えがあることが多く、部下の話を途中で修正していました。
その後、経験のなかったロボット事業に移りました。そこでは、自分の中に答えがありません。だから、部下の話を最後まで聞き、一緒に考えるしかありませんでした。
そのやり取りを何度も繰り返す中で、管理職としての私自身が大きく変わっていったのです。
もちろん、部下の話を聞けば、毎回新しい発想が出てくるわけではありません。むしろ、多くは、
「まだ少し浅いな」
「そこはもう考えた」
「そのままでは難しい」
と感じることの方が多いかもしれません。
それでも、数回に一回、
「そんな考えはなかった」
「その発想は面白い」
「そんな見方もあるのか」
と思う瞬間があります。
その一回に出会うと、部下の話を聞く意味が変わります。部下を育てるために我慢して聞くのではなく、
自分にはない発想に出会えるかもしれないから、もう少し聞いてみよう。
そう思えるようになったのです。
「もう少し聞かせて」
そう言える場面が、少しずつ増えていきました。
部下の発想を、みんなで育てる
もちろん、部下から出てきた発想を、そのまま採用するわけではありません。
その発想に抜けはないだろうか。もっと膨らませることはできないだろうか。ほかの人の知恵と組み合わせたら、さらに面白いものにならないだろうか。
そんなことを考えながら、部下とのやり取りを続けていました。
部下の発想に、自分の経験を重ねる。さらに、周囲の経験者や専門家にも意見を聞く。
すると、一人の小さな気づきが、別の知識や経験と結びつき、より大きなテーマへ発展することがあります。
その経験を重ねるうちに、部下の話を聞くことは、部下を育てるための我慢ではなくなりました。自分にはない発想に出会い、それをみんなの知恵で広げていく。
そのやり取り自体が、面白くなっていったのです。
管理職という仕事の、新たな面白さ
技術者は本来、考えることが好きです。そして、一人ひとりに、それぞれの考えや発想があります。
管理職が自分の考えを押し付ければ、それらは表に出てきません。一方で、部下の考えを引き出し、自分の経験や周囲の知恵を重ねていけば、その発想をさらに膨らませることができます。
以前の私は、自分の考えを早く伝えることが、管理職の役割だと思っていました。
しかし、部下の考えや発想を引き出し、自分や周囲の知恵を重ねながら膨らませていく。
そんな関わり方ができるようになった時、私は、管理職という仕事に新たな面白さを感じるようになりました。
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