課長が正しい答えを出し続けるほど、部下は考えなくなり、課長自身の仕事も増えていきます。
部下が案を説明している途中で、問題点に気づく。
「その進め方では難しい。今回は、こちらの方法で進めよう」
経験のある課長ほど、部下より早く答えにたどり着きます。納期や品質に責任を持つ立場なら、早く方向を示すのは当然です。しかも、課長の答えは多くの場合、間違っていません。だからこそ、この循環から抜け出しにくいのです。
これまで、TDM-004では「部下は、仕事ではなく『上司の正解』を見ていないか」、TDM-005では「『また、いつもの人に頼んでしまう』だから、課長の仕事は減らない」、TDM-006では「いつものメンバーからは、いつもの答えしか生まれない」と書いてきました。これらは別々の問題ではありません。今回は、この三つを一つの循環として考えます。
正しい課長ほど、部下の考える余地を奪う
私自身も、部下の案に問題があると思えば、早く修正することが課長の役割だと考えていました。自分の経験を使って失敗を防ぎ、仕事を前へ進める。それが責任を果たすことだと思っていたからです。
課長が答えを出せば、その場の仕事は早く進みます。しかし、それが続けば、部下も仕事を進める方法を学びます。自分で考え抜くより、課長が求める答えを早く見つけた方がよい。
部下は考えていないのではありません。考える方向が、仕事そのものから課長の正解へ変わっていくのです。
答えを出すほど、仕事は課長に戻ってくる
課長の正解を早く理解する人は、「話が早い」「安心して任せられる」と評価されます。その人に重要な仕事が集まり、ほかの人が考える機会は減っていきます。
頼れる人が手いっぱいになっても、課長は、いつもの人以外にはまだ任せられないと感じます。そのため、残った判断を自分で抱え、さらに細かく確認し、答えを出します。
課長が答える。部下が待つ。課長の考えをよく理解する人に仕事が集まる。任せ先が増えず、課長へ仕事が戻る。忙しいから、課長が答えを出す。課長が答えを出すから、さらに忙しくなるのです。
さらに、重要な仕事を考える人が、課長の考えをよく理解する「いつもの人」に固定されると、組織から出てくる答えも、課長の考えの範囲を超えなくなります。課長がすべてを把握しようとするほど、課長がすべてを把握しなければ動かない組織になります。
それでは、組織は課長の器を超えられません。
部下の考える楽しみを奪わず、考える力を信じる
課長が自分の答えを持つことは、問題ではありません。判断を部下に委ね、何でも任せればよいという話でもありません。変えるのは、答えを使う順番です。
部下の案を修正する前に、「あなたは、どう考えているのか」を聞く。結論だけでなく、そこへ至った考えを聞いてから、課長として判断する。
技術者は、本来、考えることが好きです。難しい問題に向き合い、自分なりに考え、納得できる答えにたどり着くことに面白さを感じます。課長が先に正解を渡し続ければ、その楽しみを奪います。反対に、自分の考えが組織の判断に活かされれば、部下はさらに深く考えるようになります。
そこから、課長一人では出せなかった考えが生まれ、課長がすべてを把握しなくても動く組織へ変わっていきます。
部下の考える楽しみを奪わない。考える力を信じる。
あなたは、部下が考え切る前に、自分の正解を渡していないでしょうか。
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