いつものメンバーからは、いつもの答えしか生まれない。

いつものメンバーからは、いつもの答えしか生まれない。

いつも同じ人に仕事を任せていると、ほかの人が育たない。

しかし、リスクはそれだけではありません。

重要な仕事を考える人がいつも同じなら、組織は同じ問いに、同じ考え方で答え続けることになります。

これまでの答えを、さらに磨いていく

重要な仕事ほど、課長は頼れるAさんに相談します。

二人には、これまでの経験があります。何が問題で、どう考えればよいのかも分かっています。

だから、話が早い。
出す答えの精度も高い。
仕事も確実に進みます。

たとえば、次の搬送ロボットについて検討するとします。

「次の機種は、搬送速度をもっと上げよう」

課長がそう言うと、Aさんはすぐに意図を理解します。

モーターをどうするか。
タイヤや駆動系をどう改良するか。
加減速時の安定性をどう確保するか。

二人は「このロボットを、どう速くするか」という問いに対して、技術的に精度の高い答えを出していきます。

一方、別の部下には違うものが見えているかもしれません。

ロボットが遅いのではなく、設備からの信号を待っている。
人が荷物を載せ替えるところで、作業が止まっている。
ほかの設備との連携が悪く、待機時間が生まれている。

その部下が考えているのは、

「一台のロボットを速くするより、人や設備とのつながり方を変えた方が、仕事全体は速くなるのではないか」

ということです。

課長とAさんは「ロボットをどう速くするか」を考えている。

別の部下は「仕事全体をどう速くするか」を考えている。

同じロボットを見ていても、見えている条件が違えば、考える問いも変わります。

問いが変わったことに気づけない

顧客も、技術も、競争相手も変わっていきます。

ほかのメンバーには、課長とAさんとは違うものが見えています。

顧客から聞いた、これまでとは違う要望。
現場で感じている、今の進め方への違和感。
経験が浅いからこそ浮かぶ、「そもそも」という疑問。

それは、今の答えを改善するための意見ではないかもしれません。

私たちが答えようとしている問いは、本当に今も同じなのか。

その前提を問い直す視点かもしれません。

しかし、考える人がいつも同じで、ほかのメンバーには決まった仕事だけが渡されていれば、その視点は組織の中に入ってきません。

課長とAさんは、これまでの経験を使い、これまでの答えをさらに速く、さらに確実に実行できるように磨き続けます。

正しい答えを出し続けていることが怖い

本当に怖いのは、出した答えが間違っていることではありません。

問いが変わったのに、以前の問いに正しく答え続けていることです。

仕事は回っている。
結果も出ている。
二人の判断も間違っていない。

だからこそ、問いが変わったことに気づけません。

気づいたときには、顧客や競争相手は、すでに別の問いに向き合っているかもしれません。

いつもの人だけで考えていると、同じ問いに、同じ考え方で向き合い、これまでの答えを磨き続けてしまいます。

問いが変わらなければ、組織は今ある発想の範疇を超えられません。

新たな発想を生み出すのは、答えを磨くことではありません。問いを変えることです。

重要な仕事に、いつもと違う人を加える。

それは、単にほかの人を育てるためではありません。

今まで入ってこなかった視点を持ち寄り、自分たちが向き合う問いそのものを見直すためです。

あなたの職場では、重要な仕事を考える人が、いつも同じ顔ぶれになっていないでしょうか。

まだその議論に加わっていない人には、何が見えているでしょうか。

ThinkDoorでは、技術者の考え方の特性を踏まえ、それぞれが見ているものを持ち寄り、新しい問いと答えを生み出せる職場づくりを支援しています。

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海野 幸浩

海野 幸浩

ThinkDoor代表。
電子デバイス設計者として世界シェアNo.1製品の設計に携わり、その後、管理職を経て、ロボット設計部長として100人規模の組織を統括。
自分が先に答えを出すマネジメントから、部下の考えを引き出し、一緒に考えるマネジメントへ転換した経験をもとに、現在は技術系組織の管理職育成を支援しています。

技術系管理職・リーダー向けの個別相談も受け付けています。
部下への任せ方、1on1、上司との関係、仕事の抱え込みなど、会社では話しにくい悩みを個別に整理します。
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