課長が忙しい。
判断も相談も集まり、トラブルが起きれば最後は課長が火消しに入る。
現場ではよくある光景ですが、この状態が長く続くと、課長自身が疲弊するだけでなく、部下も育ちにくくなります。
しかも厄介なのは、この状態が単発の問題ではなく、ぐるぐる回る負のスパイラルになりやすいことです。
忙しい。
だから早く決めたい。
そこで課長が先に結論を言う。
すると部下は反論しない。
でも納得しているわけではない。
納得がないまま動くので、どこかで他人事になり、手戻りや炎上が起きる。
その結果、また課長が挽回に入る。
そしてさらに忙しくなる。
この流れは、技術系組織では特に起きやすいと感じます。
技術者は、筋が通っているか、理屈で納得できるかを大事にします。
だから、先に結論だけを示されると、表面上は動いているように見えても、心の中では腹落ちしていないことがあります。
反論がないことと、納得していることは同じではありません。
課長から見ると、
「反対が出なかったから進めた」
「ちゃんと伝えたつもりだった」
となるのですが、部下側では
「そういう方針なんだな」
と受け取っただけで、自分事になっていない。
すると、うまくいかなかったときに、自分たちで戻そうという動きが弱くなり、結局また課長が出てくることになります。
こうして、課長が先回りするほど、課長の仕事は減らず、むしろ増えていきます。
では、どう抜け出すのか。
ポイントは、最初から完璧に任せようとしないことです。
大きく手放すのではなく、まずは部下が納得して動ける状態をつくることから始める。
そのために必要なのは、先に答えを言い切ることではなく、部下が考えを出せる余白をつくることです。
たとえば会議の場でも、最初に結論を固定するのではなく、
- まず何が論点かを揃える
- 部下の見立てや案を出してもらう
- どこに懸念があるかを聞く
- そのうえで結論に絞る
という流れを取るだけでも変わってきます。
このとき大事なのは、時間をかけることそのものではありません。
理屈で納得できる筋道をつくることです。
筋が通っていれば、技術者は動きやすくなります。
理由が分かれば、自分事になりやすくなります。
そして、自分事になると、やらされ感ではなく「自分たちで進める」状態に近づきます。
さらに、そこにもう一つ必要なのが共感です。
納得だけでは、「分かった」で止まることがあります。
でも、目指したい姿や、そこに向かう意味に共感できると、「やる価値がある」に変わります。
理屈で分かることと、気持ちが前を向くこと。
その両方がそろって、初めて思考のスイッチが入りやすくなります。
忙しい課長を困らせているのは、部下の意欲不足だけではありません。
課長が忙しいあまり、先に結論を出し、反論が出ず、納得が生まれず、他人事のまま進み、また課長が火消しに入る。
この負のスパイラルそのものが、課長をさらに忙しくしていることがあります。
だからこそ必要なのは、
先に答えを渡して早く進めることではなく、納得と共感を通して、部下の思考のスイッチを入れること
なのだと思います。
課長に仕事が戻り続ける状態を変えるには、部下の動きを変える必要があります。
そして部下の動きを変えるには、課長自身の関わり方を少し変える必要があります。
その小さな転換が、負のスパイラルから抜け出す入口になります。
ThinkDoorでは、技術者特性を踏まえながら、「教える」から「考えさせる」への転換を支援しています。若手が育たない、教えても定着しない、管理職に仕事や判断が戻ってくるといった課題に対して、関わり方の転換から現場づくりをご一緒しています。

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