誰かのアウトプットは、必ず誰かのインプットになる
会社の仕事は、一人の工程だけでは完結しません。
誰かが終えた仕事は、次の誰かへ渡され、その人の仕事を始めます。
ロボットの設計部長をしていたとき、新製品の小型化に取り組んだことがあります。
ロボットの内部には、多くの配線や配管が通っています。それらを限られた空間に収めながら、製品をできるだけ小さくしていきました。
図面上では成立し、実際に組み立てることもできました。
ところが、完成した試作機でメンテナンス作業を確認すると、別の問題が見えてきました。
組み立てられても、修理できるとは限らない
製品を組み立てるときには、周囲の部品がまだ取り付けられていません。空いている場所から手を入れ、配線や配管を先に通すことができます。
しかし、製品の完成後に通電不良や通信不良が起きれば、ほかの部品が組み上がった状態で、問題のある配線だけをやり直さなければなりません。
組立時にはできた作業でも、完成後には手を入れる空間が狭くなります。特に、手の大きな作業者にとっては扱いにくい構造になっていました。
配線や配管は、図面に描いた線のとおりに収まるわけではありません。
太さや素材が変われば、曲げたときの張り出し方も変わります。実物がどこまで膨らみ、周囲の部品とどのような位置関係になるのか。図面だけですべてを読み切ることはできません。
小型化という設計上の目標は達成していました。しかし、その製品を後から修理する人の仕事まで考えると、十分とは言えなかったのです。
読み切れないことを、現物で確かめる
この問題は、試作機を使った確認の中で見つかりました。
試作と現物確認は、設計の間違いを探すためだけに行うものではありません。図面では読み切れないことを、実際の製品で見つけるためでもあります。
今回も、試作後に修正することを前提に進めていたため、出荷前に必要な見直しができました。後戻りの影響も最小限に抑えられました。
大切なのは、設計者に「もっと先まで想像しなさい」と求めることではありません。
どこまでを設計段階で考え、何を現物で確認するのか。自分とは体格の違う人が作業するとき、どこまでの作業性を確保するのか。
設計部門と製造部門が、一緒に決めておく必要があります。
OJTでは、次の人とのつながりまで教える
OJTでは、仕事の手順や判断の仕方を教えます。
この図面はどう描くのか。この作業はどの順番で行うのか。どこを確認すればよいのか。
しかし、自分の工程の中だけで仕事を教えていると、後輩も自分の担当部分が終われば、仕事は完了したと考えます。
図面は製造部門へ渡ります。そこで作られた製品は、品質を確認する人、メンテナンスする人、そしてお客様へと渡っていきます。
だから先輩は、手順だけでなく、仕事のつながりも教える必要があります。
「この図面を次に使うのは誰だろう」
「組立時と、完成後の修理では何が変わるだろう」
「図面だけでは分からないことを、どこで確かめるのだろう」
こうした問いを後輩と一緒に考えることで、仕事を見る範囲が、自分の担当工程からその先へと広がります。
自分の工程で正しくできたことは、仕事の途中です。
自分のアウトプットが、次の人の仕事を始めます。その人が仕事を進められるところまで考える。
そこまで教えて、初めて仕事の全体を伝えたことになります。
ただし、ここまでを教える先輩一人の努力に任せてよいわけではありません。
OJTを任せる上司にも、引き受けるべき責任があります。

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