技術系管理職が、部下より先に答えを出してしまう理由

部下から相談を受けた時、話を聞きながら、すでに答えが見えていることはないでしょうか。

「その条件では成立しない」
「先にここを確認した方がいい」
「その方法より、こちらの方が早い」

技術者として経験を積んできた人ほど、問題点やリスクに早く気づきます。

そして、より良い進め方も見える。

だから、部下が遠回りしているように見えると、つい答えを伝えたくなります。

それは、部下の成長を止めようとしているからではありません。

仕事を早く前へ進めたい。
失敗を減らしたい。
良い成果を出したい。

その責任感から生まれる行動です。

私自身も、そうでした。

技術者は、答えを出すことで評価されてきた

技術の仕事は、最後は一つに決める責任があります。

設計値をいくつにするか。
どの材料を使うか。
どの構造を採用するか。
加工条件をどう設定するか。

途中にはいくつもの選択肢があっても、最終的には根拠を整理し、一つの答えに絞り込む必要があります。

そのため、技術者は仕事を通じて、

  • 正解を一つに絞る
  • 理屈で納得してから動く
  • 複雑な問題を考え抜く

という力を身につけていきます。

そして、早く正しい答えを出せることが、技術者としての評価につながってきました。

これは、とても大切な強みです。

しかし、管理職になると、この強みが思わぬ形で働くことがあります。

部下が考えを語り切る前に、答えを示してしまう

私がデバイス事業にいた頃、自分の専門分野については、多くの場合、自分の中に答えがありました。

部下の話を聞くと、

「考えが浅い」
「条件が足りない」
「その方向では成立しない」

と、比較的早い段階で判断できました。

当時の私は、技術的な議論では、上司も部下もなく対等に話したいと思っていました。

違うと思えば違うと伝える。
自分により良い案があれば示す。

それが、技術者として誠実な姿勢だと思っていました。

実際、私が示した答えの方が、技術的に妥当だったことも多かったと思います。

ただ、今振り返ると、別のことが起きていました。

私が早い段階で答えを示すと、部下は自分の考えや、その背景を最後まで語る前に、上司の答えを受け取ることになります。

それが続けば、部下は少しずつ、自分で考えるより、上司の答えを確認するようになります。

「考えない部下」を上司がつくっていることもある

管理職になると、

「部下が自分で考えない」
「すぐに答えを聞きに来る」
「もっと主体的に動いてほしい」

と感じる場面があります。

しかし、その状態をつくっている一因が、上司自身の関わり方にあることもあります。

部下が考え始める。
途中で相談に来る。
上司には答えが見える。
上司がすぐに答えを伝える。

この流れが繰り返されると、部下にとっては、自分で考え続けるより、上司に確認した方が早くなります。

上司は「部下が考えない」と感じ、さらに答えを出す。

部下は「最後は上司が決める」と感じ、さらに答えを待つ。

こうして、上司はますます忙しくなり、部下は考える機会を失っていきます。

問題は、上司が答えを持っていることではありません。

部下が考えを語り切る前に、その答えを使ってしまうことです。

答えを捨てるのではなく、使う順番を変える

だからといって、管理職は答えを言ってはいけない、ということではありません。

管理職には成果責任があります。

成立しない案を、そのまま通すことはできません。
技術的に危険な判断を、育成のためだからと任せるわけにもいきません。

必要なのは、自分の答えを捨てることではなく、使う順番を変えることです。

答えを伝える前に、まず部下が何を見て、どこまで考えたのかを聞く。

「なぜ、そう考えたのか」
「どの条件を重視したのか」
「他には、どんな案を考えたのか」

部下の考えを聞いたうえで、管理職として判断する。

技術者として培ってきた、正解を求める力、根拠を考える力、複雑な問題を解く力を、自分一人で答えを出すためだけでなく、部下と一緒により良い答えをつくるために使う。

技術者として答えを出してきた経験は、管理職になってからも大きな強みです。

ただ、その強みを使う順番は、少し変える必要があるのだと思うようになりました。

技術系管理職が、部下の考える力を引き出しながら成果を上げるための研修については、こちらでご紹介しています。

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