管理職になると、
「自分は人をまとめるのが得意ではない」
「技術の仕事は好きだけれど、マネジメントは向いていない気がする」
そんな思いを持つ技術者は少なくありません。
実際、技術者として成果を出してきた人ほど、マネジメントへの戸惑いを感じやすいものです。
なぜなら、技術の仕事では
- 正解を探す
- 精度を上げる
- 自分で考えて答えを出す
ことが強みとして評価されやすい一方で、マネジメントでは - 人に任せる
- 相手の考えを引き出す
- 自分が答えを持っていても、先に言いすぎない
といった、別の力が求められるからです。
そのため、エンジニア思考とマネジメント思考は、まるで別物のように感じられることがあります。
でも私は、ここは切り替えるものというより、活かし方を変えるものだと思っています。
エンジニアの特徴としてよく見られるのは、
正解を探そうとすること、
理屈で納得したいこと、
そして考えること自体が本来は好きだということです。
この特徴は、関わり方を間違えると、負のループを生みます。
たとえば、忙しいからと課長が先に結論を出してしまう。
すると部下は反論しない。
でも納得していない。
だから他人事になり、手戻りや炎上が起きる。
最後はまた課長が火消しをすることになる。
これは前の記事でも触れた、技術系組織で起きやすい流れです。
ですが逆に言えば、エンジニアの特徴は、うまく使えばマネジメントの武器になるということでもあります。
まず一つ目は、正解を探す力です。
技術者は、曖昧なまま進めるより、よりよい答えを探そうとします。
この力は、マネジメントでも大きな強みです。
メンバーの話を聞き、状況を整理し、何が本質的な課題かを見極め、よりよい打ち手を考える。
これはまさに、精度を上げる力の活かしどころです。
二つ目は、理屈で納得する力です。
技術者は、理由が分からないままでは動きにくいことがあります。
これは一見、扱いにくい特性に見えるかもしれません。
でも、筋道を大切にするからこそ、納得できたときには強く動ける。
管理職がその特性を理解し、部下にも「なぜそうするのか」を丁寧に渡せるようになると、現場の動きは大きく変わります。
三つ目は、考えることが好きという点です。
日々の仕事に追われていると見えにくくなりますが、多くの技術者は本来、考えることそのものが嫌いではありません。
むしろ、筋道を立てたり、工夫したり、改善案を考えたりすることに面白さを感じる人が多い。
だから、先に答えを与えすぎるのではなく、考える余白をつくると、アイデアが広がりやすくなります。
つまり、エンジニア思考は、マネジメントに向いていないのではありません。
そのままでは活かし方が限定されているだけです。
自分で答えを出す力を、相手の答えを引き出す力へ。
自分で精度を上げる力を、チーム全体の精度を上げる力へ。
自分一人で考える力を、みんなで考えられる場をつくる力へ。
そう変わっていくと、エンジニアとして培ってきた強みは、管理職としての強みに変わっていきます。
マネジメントは、技術を捨てて別人になることではありません。
技術者として持っている特性を、組織を前に進める形に変えていくことです。
だから私は、
エンジニア思考とマネジメント思考は対立するものではなく、
つながっているものだと思っています。
技術者が管理職になるとき、本当に必要なのは「人に合わせられる別のタイプになること」ではありません。
自分の強みを理解し、その強みが組織で活きる形に変えることです。
その転換ができると、マネジメントは苦手な仕事ではなく、技術者としての強みを一段広い形で使える仕事に変わっていきます。
ThinkDoorでは、技術者特性を踏まえながら、「教える」から「考えさせる」への転換を支援しています。若手が育たない、教えても定着しない、管理職に仕事や判断が戻ってくるといった課題に対して、関わり方の転換から現場づくりをご一緒しています。

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